Column

論理的に正しい VS 心情的 / 道義的に正しい

2017年も、あっという間に過ぎ去りまして、気付けば大晦日です。とは言え、いろいろあった1年でした。

今年、事業運営する中で難しいとつくづく考えさせられたことは、「論理的に正しい判断」と「心情的 or 道義的に正しい判断」のどちらを選択するかということでした。

物凄く簡素化して書くと、自社からの売上が100%の事業提携関係にある会社(資本関係はない)が経営危機に陥り、救済するかどうかの判断を迫られました。論理的に正しいと思われる判断は、民事再生手続きに入り、債務圧縮を図ることで、再建への道筋をつけること。心情的に正しいのは、自社から貸付等の形で財務的支援をすることで、再建への道筋をつけること。

人の想いや覚悟と向き合いながら共に仕事をし、過去の経緯の積み重ねがあって”今”が起きていることを鑑みると、「論理的に正しい」だけでは、その選択肢を選びづらいという状況に直面しました。経営コンサルタントではあり得ず、事業運営者視点だからこそ起こりうることのように思います。

侃々諤々の議論の末、最終的には着地できそうな道筋が見えましたが、難しい判断でした。

上場にみるスタートアップ経営者の本質

ビジネスSNSを運営するウォンテッドリー株式会社が2017年8月10日に、東京証券取引所マザーズ市場への新規上場について承認されたのですが、この上場案件があれこれ物議を醸してまして、ベンチャー経営に携わるものとして色々考えさせられました。

というのも、ウォンテッドリーのCEOである仲暁子さんへの評価が真っ二つなんですね。。。

Wantedly(ウォンテッドリー)のIPOがいろいろ凄いので考察・・・こちらはネガティブ評価

WantedlyのIPOを現役CFOが勝手に斬る!・・・こちらはポジティブ評価

ご興味ある方は、この2つの記事を覗いてみて頂きたいのですが、ほぼ同じ論点についてまったく違う見方をしているんですよね。

株式上場って、本当に多くの利害関係者の”利害”を巻き込んでいくので、その過程や判断に経営者の本質が現れると思うのです。経営者が、より”何を”重視しているかが分かる。経営者というより、人間としての生々しいものも見えてくるので、当事者である会社の従業員にとっては悲喜こもごも、愛憎相半ばする状況なのかなと邪推するわけです。

私自身は、前者の記事に近い見立てをしていまして、正直なところ、上場する理由(大義名分)が見当たらず、従業員の切ない気持ちを想像するとちょっと可哀そうに思ったりしています。仲さんは、早めにエグジットしようと思っているのか、本当に長期目線で会社のバリューを上げていけばいいと腹を据えているのか、1,2年後には結果が出ていそうです。

組織診断の神髄

やや仰々しいタイトルになってしまいましたが、先日HICEの報告会にて、とあるクライアント企業の経営課題と課題解決に向けた提言を行ったところ、「安藤さんは、どうしてそこまで分かるんですか!凄いですね・・・」と驚かれました。

HICEは、従業員満足度調査と顧客満足度調査を組み合わせた統合的な組織診断のツールなのですが、そこから導き出された結論が、実際にクライアント企業の経営陣が認識していた内部の課題感とばっちり当てはまったのです。クライアントからすると、何故内部者でもないのに、そこまで会社の深部の課題まで言い当てることができるのかと驚いたのでしょう。

実は、CS調査とES調査を組み合わせると、その会社がどれくらい順調で、言い換えると、どれくらい病んでいるか良く分かるのです。前年度の調査結果と比較すると、どこが改善され、どこが悪化しているか分かりますし、顧客の声・従業員の声(共に自由記述の回答)をよく読み込むことで、今何が起きていてどう受け止められているかが良く分かるのです。

特に重要なのが、回答者が自由に記入する自由記述の回答です。自由記述の回答から、真実を見抜くコツが3つあります。

  1. 複数人から共通して指摘されている問題に着目すること
  2. 真実性(客観的かつ公正に問題を描写し、私心が無さそうであること)が高い回答者と特定すること
  3. 指摘されている複数の問題を関連付け、因果関係を構造化すること

この3つができれば、的外れではない、芯を突いた「課題の指摘と解決に向けた提言」を行うことができるのです。

実際にどうやるかというと、推理小説に出てくる探偵にでもなった気分で、その会社がどんな状態で、どんなことが起きており、皆がどのように思っているか、妄想を膨らませるのです。「Aさんがこう言っていて、Bさんがこう言っているから、これはおそらく重要な問題だな。Cさんはこう言っているけど、これはおそらく小さな問題だろう。毎回、鋭い指摘をしているDさんがいっていることは、定量データの変化を裏付ける根拠と言えるし、AさんBさんが指摘している問題の本質的な原因かもしれない」こんな感じです(笑)

CS調査もES調査もアンケート調査なのですが、実はとても奥が深いのです。考え抜かないと、本当に重要なエッセンスまでたどり着けないので、大変ですし難易度も高いのですが、組織の深部をえぐるような組織診断を行い、それでクライアント企業が変わってくれるのであれば、非常に有意義な仕事になるものだと考えています。

アンケートから顧客の本音は分かるのか?

「顧客(消費者)に対するアンケート調査からは、顧客の本音は分からない」という意見を耳にすることがあります。果たして、それは本当でしょうか? 今回は、アンケート調査から顧客の本音は分からないのか?について考えてみたいと思います。

まずは、アンケート調査の流れについて触れたいと思います。アンケート調査を実施する上では、基本的に次のステップで進めることになります。

①仮説構築→②調査設計→③実査→④集計・分析→⑤解釈

この5つのステップで、それぞれ正しい方法で進めることができなければ、求めている答えに到達しないというのは勿論なのですが、最終的に「差」を生み出すのは、⑤解釈のところです。

例えば、新サービスの購入意向度調査をしたとしましょう。アンケートの回答者にとっては、まだ見ぬサービスなので、実際に自信が購入するかは本人にとってもまだ分かっていないわけですので、アンケート結果から直接的な未来予測ができないというのはその通りです。

しかし、アンケート回答者の属性情報を正しく理解していれば、どういう人たちがどれくらい好意的な反応をしてくれているかはわかります。また、既存のサービスや、他の類似サービスの購入意向と比較することで、実際にどれくらい売れているか把握可能なサービスからの情報も得られます。

こうした情報から、アンケートから導き出された分析結果を、「解釈」するのです。正直なところ、どう「解釈」するかは、分析者(アナリストやコンサルタント)のセンス(≒知識や経験の積み重ねから生み出せるハイレベルな洞察)に依存するのですが、よい解釈ができれば、かなりの精度で、顧客の本音を掴むことができます。

 

 

CS&ES経営の先進事例

CSとESの両方を重視した経営を行い、高い業績を残している会社を紹介しましょう。

「人間性尊重の理念に基づき、第一に従業員満足(ES)を追求する。そして、その従業員が求める私たちのあるべき姿として、お客様満足(ES)を追求し続ける。」

これは、ネッツトヨタ南国という自動車販売会社が掲げる理念です。この会社は、トヨタ自動車系列のディーラーが全国に約300社ある中で、1999年にCS調査が開始されてから継続して全国1位を獲得し続けています。

創業者である横田会長は、社員に販売ノルマを課すことはせず、長期的にお客様と信頼関係を築くことを重視する経営方針を一貫して保ち続け、ES、CS、業績それぞれを高いレベルで実現しているのです。 横田氏はCSがESに与える影響について「待遇以上に、上司や同僚から信頼されるとか、お客様から感謝されることが、自分の成長を実感でき、仕事への意欲につながる」と述べています。

そして、ESがCSに与える影響については「社員自身が、仕事や会社に満足していないと、心からお客様に喜ばれたい、満足していただきたいと思わない」と、CSとESは相互に影響すると主張しています。 (参考文献:日経ベンチャー2004年11月号)

これは、ネッツトヨタ南国に限った話ではないのです。例えば、ザ・リッツ・カールトンは、ESとCSを高めることが、自社の利益につながるという明確な信念を持っています。そして、CSを高めるのは、お客様と接する従業員であり、従業員満足度を高めることが顧客満足度を高めることにつながると考えています。ゆえに、年に数回、全世界同時でES調査を行い、各ホテルで適切なマネジメントが行われているかを検証しています。

高いCSを獲得している企業はどこも、ESを高めるための仕組みを整備しており、CSとESをスパイラル的に向上させていくために大きな努力をしています。